オイルショックの再来は?
ニューヨークで取引され、世界の原油価格の指標とされているWTI原油は1バレル=80ドル台目前になりました。原油価格の高騰を背景にガソリンの小売価格の上昇が続いています。コスト削減で対処してきた産業界も、徐々に製品への価格転嫁に動き出しています。1998年末には10ドル台割れさえ視野に入る水準だったことを考えれば、驚異的な上昇と言えます。今ではゴールドマン・サックス証券が100ドル説を唱えているぐらいです。
価格水準だけを見れば、1970年代に起きたオイルショック(石油危機)当時をはるかに上回っていますが、物価の変動を加味すると現在の80ドル程度が当時の価格に相当すると言われています。また、先進主要国を中心に国家備蓄が行われていること、エネルギー効率が高まっていることなどから、オイルショックは起こらないとも指摘されています。そうした中、産油国の一つであるインドネシアでは、原油高騰の影響が深刻だとして通貨ルピアが暴落しており、1997年のアジア通貨危機の再来を危惧する声も出始めています。今回の原油相場の高騰は、国力に劣る発展途上国や新興国ほど強いダメージを受け、先進諸国への影響は軽微にとどまるものと思われます。
油高は円安、そしてインフレの下地に
資源に乏しい日本の場合、原油や非鉄金属などの素材価格の上昇は円安要因となります。原材料価格の上昇が企業収益の悪化、引いては株価の下落をイメージさせるためでもあります。現在、日本はまだデフレ状態から完全に脱せずにいますが、原材料高とりわけ原油価格の上昇は輸入インフレを引き起こす大きな要因であり、インフレは貨幣価値の下落を意味することでもあるわけですから、その国の通貨は売られやすいということになります。
逆に、資源国通貨と呼ばれるオーストラリアドル〔豪ドル〕やカナダドルは、原油相場や金〔ゴールド〕相場が上昇期にある場合に投資資金の流入を招くという特徴が見られます。豪ドル/円、カナダドル/円などのクロス円へ投資を行う際には、その通貨の本来の強弱感をつかむためにも、あわせて豪ドル/米ドル、米ドル/カナダドル相場のトレンドを見るようにしたいものです。
原油高によるデフレ脱出
原油は経済の潤滑油とも言われるように、単なるエネルギーとしてばかりではなく、様々な商品の原材料として私達の生活と結びついています。身近なところではガソリン価格の上昇が話題になっていますが、スーパーなどで使用されているレジ袋やゴミ袋なども原油と無縁ではありません。また、竹輪やかまぼこといった練り製品を生産する企業が輸送コストの上昇を背景に、実質値上げに踏み込んだ事例があります。
これまでは原油価格の上昇に対し、製品を値上げできる環境にはなかったこともあり、企業間の体力競争(コスト削減対策)に重点が置かれてきました。しかし、政府が景気の踊り場脱出を宣言し、物価は少しずつ上昇圧力を受けているようです。消費者物価指数(CPI)も上昇に転じ、もしかすると、原油高は日本のデフレ退治という良い面での役回りをも演じるのかも知れません。
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