貯蓄の中央値は400万円
金融広報中央委員会が平成17年6月28日〜7月8日に行ったアンケートの結果によると、金融資産の平均保有額は1,085万円。ここでいう金融資産には「事業性の預貯金および給与振込や振替等で一時的にしか口座にとどまらないような預貯金は含まない」ため、金融資産を保有していない世帯も2割強あり、金融資産を保有する世帯のみに限ると平均値は1,544万円という結果になっています。
毎年行われるこのアンケートの結果については、マスコミでも取り上げられることが多いのですが、平均値が減ったり増えたりということには表面的な意味しかなく、その中味・傾向を把握することが大事です。その際、解説記事でよく出てくるのが平均値と中央値の違いです。中央値とは、調査対象を少ない順、もしくは多い順に並べた時に、真ん中に位置するもので、この例では金融資産保有額を順番に並べた場合に中央に位置する金額ということになります。
その中央値ですが、平均1,085万円に対して400万円、平均1,544万円に対して830万円という結果が得られています。実感に近い数値として捉えられるのは中央値であり、今回の結果からは「400万円程度貯蓄している人が多い」ということと、少数の富裕層により平均値が押し上げられている傾向を読み取ることができます。
総中流意識崩壊で下流社会が出現?
かつては「一億総中流」とさえ言われた日本社会も、ここ数年で貧富の二極化の流れが強まっていることがうかがわれます。学識者の中には、これまでの日本を官僚主義と批判し、ようやく米国型の資本主義社会へ向かい始めたとして歓迎する向きもあるようです。(官僚とは国政に影響力をもつ上級公務員のことで、官僚主義とは政治家ではなく官僚が実権を握って法案の内容を決めたり、政策を提議したりすることを指します。良いイメージで使われる言葉ではなく、むしろ閉塞的・規制的・秘密主義的なニュアンスを持っています。)こうした見方が正しいのかどうかは判断する人次第であり、一概にどうとは言えませんが、少なくとも持つ者と持たざる者との格差が広がっていることに関しては、それを事実として受け止める必要があるでしょう。
ヒルズ族の躍進ぶりが表立っている昨今、逆に問題提起の意味を込め「下流社会」にスポットを当てる書籍も出てきました。若年層ではニート・フリーター問題が未解決であり、財政赤字問題を背景とした社会保障費の削減や増税が不可避との論調で、いわゆる弱者切り捨てが進められて行くというものです。米国では上位1%の層が90%の金融資産を保有しているとさえ言われており、今後は日本においても金融知識・運用ノウハウの必要性がクローズアップされてくるものと思われます。「貯蓄から投資へ」というスローガンには奥深い意味があるかもしれません。