WTI原油は日本には輸入されていない
ひとくちに原油といっても、原油は世界に約300種類あると言われています。そのうち日本が輸入しているのは100種類程度です。ニューヨークで取引される有名なWTI原油は日本には1滴も輸入されていません。
世界最大の産油地帯である中東は、軽質から重質まで様々な比重の原油を産出しますが、比較的高硫黄の原油が多く、インドネシア産やマレーシア産のいわゆる「南方産原油」と呼ばれるものは、低硫黄ですが重質です。そのため、南方産原油は電力会社が火力発電の燃料として原油をそのまま燃焼させる「生炊き原油」として消費されることが多くあります。ベネズエラやメキシコなどの中南米産や米国のメキシコ湾岸産は、重質高硫黄です。
原油の分類
炭化水素のタイプによる分類
パラフィン系原油 | 潤滑油が多く取れる(例:インドネシア原産) |
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ナフテン系原油 | アスファルトが多く取れる(例:ベネズエラ原産) |
混合系原油 | パラフィン系とナフテン系の中間(例:中東原油) |
硫黄分による分類
スイート原油 | 硫黄含有量が1%以下(例:北海原油) |
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サワー原油 | 硫黄含有量が多い(例:中東産原油) |
比重を基準とした分類
比重により原油の分類は、全米石油協会(American Pertroluem Institute : API)が定めたAPI度を使います、水と同じ比重を10度とし、数値が大きくなるほど軽質で、ガソリンや灯油などの高価な製品留分が多くとれることを示し、価格評価も高い傾向にあります。
API度 | 比重 | |
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軽質原油 | 34.00以上 | 0.85以下 |
中質原油 | 30.00〜33.99 | 0.85〜0.88 |
重質原油 | 29.99以下 | 0.88以上 |
原油は「売ってもらっている!?」
例外もありますが、特に中東産油国は消費国に対して「原油を買ってもらっている」ではなく、「原油を売ってあげている」という意識が強くあります。第二次世界大戦後、地価資源はその国に属するという「資源ナショナリズム」が台頭するまでは、メジャーが石油から得られる利益をほしいままにしていました。産油国とメジャーによる利権を巡る激しい対立を経て、現在では原油の利権はほぼ産油国政府が握っています。サウジアラビア、イラン、クウェートは、国営石油会社が原油の権益を100%抑えています。UAEでは、国営石油会社のほかにメジャーが中部油田の権利を持っています。
産油国が石油を武器として使ったのは、第四次中東戦争の勃発したときだけですが、イランの核開発問題など中東情勢が不穏になってきた現在、石油は単なるコモディティではなく戦略物資として意識され始めています。需要が急増する中国やインドなどは国を挙げて資源外交を展開しています。供給途絶が起こらないよう産油国と良好な関係を築くことが重要になっています。