REIT 人気化の背景
不動産投資信託(Real Estate Investment Trust、略してREIT)とは、投資家から集めた資金をオフィスビルなどの不動産で運用し、賃貸収益や売却益などを配当金として投資家に分配するものです。REIT が最初に登場したのは、平成13年9月10日のこと。日本ビルファンド投資法人・投資証券【証券コード8951】とジャパンリアルエステイト投資法人・投資証券【証券コード8952】の同時上場が始まりでした。それから様々なREITが上場され、株式・債券に並ぶ投資商品としてすっかり定着しています。
REIT の特長
- 証券取引所に上場されており流動性が高い・・・株式と同様に売買でき、証券会社によってはネット取引も可能。
- 相対的に利回りが高い・・・分配金の原資は物件の賃料などであり、安定的に高利回りを享受できる。なお、各REITの詳細に関して は、こちら にて公開されています。
- 投資金額が低い・・・一取引単位100万円以下。
- リスクが分散されている・・・不動産の専門家が複数の物件に投資して運用しているため、リスク分散効果が得られる
日銀が既にバブル化を懸念?
REITや従来からある不動産証券化商品(不動産ファンド)が人気を集めている理由としては、超低金利下において高利回り(REITで3〜5%程度)を追求できることが一番の理由かも知れませんが、注目すべきは機関投資家の動向です。一般的な機関投資家はローリスク志向のため、当初はREIT市場への参入は見送り傾向にあったと言われています。その安全志向の機関投資家がREIT買いに向かっている最大の理由は、日銀の量的緩和による「過剰流動性」、そして金利の先高観にあるようです。金利の上昇は国債の下落をもたらすため、運用難から国債投資へと偏重気味だった地方銀行が主体となって、積極的にREIT市場に参入しているとの見方がなされています。REIT市場は年金資金などが分散投資という観点から食指を伸ばしていると言われ、全体的に買われている状況となっています。
不動産シンクタンクの住信基礎研究所によると、不動産投資市場の規模は2004年12月末時点で4.3兆円(うちREITは約2兆円)に達し、わずか1年半で2.8倍に膨らんだとされています。さらに、その後も多数の銘柄の上場が予定されていることから、REITの市場規模は3兆円に達すると見られています。このような市場の盛り上がりに対して、日銀が警鐘を鳴らしている点には注意が必要です。不動産市場が高利回りを享受出来てきたのは、不良債権処理に伴い安価で土地が放出されてきたことに起因しています。それが最近ではファンドの組成が相次いだことで地価の上昇がもたらされ、相対的に利回りは低下していると言われています。物件確保に凌ぎを削るファンドは都心から地方へと物色の矛先を変えつつ、今のところ収益を確保できているようですが、この流れが永続的に続くわけではないだけに、今後も注意が喚起されてくるものと思われます。一部では「ミニバブル」の様相との指摘もあり、物価動向に目を光らせている日銀からは「不動産価格の動きには注意が必要(幹部)」との意見も出され、「銀行からの資金の流れを厳格にチェックする」との意向も示されています。
要注意の金利上昇局面での投資
教科書的に言えば、デフレ脱却からインフレへと移行してくれば、物価や金利の上昇に伴って現物資産(不動産、株など)も値上がりするということになるのでしょうが、それはあくまでも金融市場が正常な場合の話と言えます。
しかし、過剰流動性(金余り状態)を背景に資産効果が表面化している現状では、金利が上昇局面に入ってくれば投資資金は回収を余儀なくされ、それによる資金流出で不動産投資市場は混乱する可能性が生じます。ある試算では、「長期金利が1%上昇すれば、不動産ファンドは20%下落する」との見方もなされているぐらいです。今のところ日銀は量的緩和策を継続することを国内外にアナウンスしており、過熱気味のREIT市場ではあっても、上記のようなリスクが極端に膨らんでいるとは言えないのかも知れません。ただ、これから投資を考えると言うのであれば、楽観した見方は排除してリスクに敏感になっておく必要があることは言うまでもありません。